ご紹介中の本は、イラストレーターという職業で生計を立てる筆者が、非常に勉強になった本。イラストレーションやアニメーションの勉強では基本ともいえるバイブルです。
徳間書店「生命を吹き込む魔法」
このホームページでは強く印象に残った部分を簡単にご紹介させていただいております。あらすじ未満??実際に書籍を購入されると、きっと一生モノの教科書として活躍してくれると思います。
カテゴリ「アニメーションの技法2」/17
アニメーション基本原則4-3・「逐次描きと原画による設計」中割りの重要さ
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アニメーションの基本原則(アニメーターたちの基本原則9つ)となった手法についてをお伝えしています。
アニメーション基本原則4、「ストレート・アヘッド・アクションとポーズ・トゥ・ポーズ」その3、中割の重要さ。
ストレート・アヘッド・アクションとポーズ・トゥ・ポーズ3
4番目のアニメーション原則、ストレート・アヘッド・アクション(逐次描き)とポーズ・トゥ・ポーズ(原画による設計)についてその3です。( アニメーターたちの基本原則9つはリンク先でご確認下さい)
実際にはどういった方法でアニメが作られていくか、制作の現場ではストレート・アヘッド・アクション(逐次描き)が軌道から逸れすぎるのを防ぐため、両者を統合した方法が取られている、そんなハナシに触れさせて頂きました。今回はその続きをお話します。
様々な演技がつながっている場合も、別のアプローチが必要です。
例えばしょんぼりしているミッキーマウス、観客に背を向け、両手をポケットに深く突っ込み、一度だけちらりと振り向き、足元の石を蹴って立ち去るとします。
このカットでは、各ポーズの明快さやアピール(訴える力)や伝達力が最大になるように注意深く扱わなくてはならなりません。ということでポーズ・トゥ・ポーズを使います。それぞれのポーズは個別に処理しますが、同時に全体的な調整行って、効果をできるだけ高めるようにします。
各ポーズがうまく連結すれば、あとは中割りの絵(日本語で動画の意)を計算してアクションをブレイクダウン(分解)していくだけ。ストレート・アヘッド・アクション、ポーズ・トゥ・ポーズ、2つの方法のどちらかを使うか決める際には、「テクスチュア」も考慮しなければなりません。
一連のアクションにはメリハリが重要です。すべて同じ激しさで動きの量も同じだったら、たちまち冗漫で陳腐に見えてきてしまいます。インパクトはどこにも無いのです。
その反対、全体の構造の中にアクセントや動き、なめらかなアクション、そして「ぎくしゃく」した短いアクションの対比、さらには予想外の間合いがあると、オーディエンス(観客)は感動さえ覚えてくれるかもしれません。そしてそれは、ストレート・アヘッド・アクション(逐次描き)では描けません。
つまり、中割りだって重要なんです。
ポーズ・トゥ・ポーズをならば、さまざまな動きを含んだテクスチャを考案することができるし、全体的な表現の一部分として機能するようにアクションを設計することもできます。
ポーズ・トゥ・ポーズを最初に使ったアニメーター達は、手っ取り早く結果を出すことに気をとられ、その方法がもたらす素晴らしい未来に気づかなかった。キャラクターの画面上の位置は気にしても、人を楽しませる可能性についてはあまり考えなかったのです。
筆者が同僚に聞いたハナシでは、ジブリの映画ゲド戦記がいい例だそう。
「この男はここにいて、まず帽子を、次に杖を手に取る。6、7枚原画を描いてあとは「中割りの絵」(日本では動画)を入れれば、このカットは一丁上がりだ!」。
こんなやり方で、それぞれのポーズを連携させることを考えなかったらそのカットは不自然さでぎこちないものになってしまうでしょう。
結局、ポーズ・トゥ・ポーズ(原画による設計)が真価を発揮するようになったのは、もっと後のことです。強力なポーズが開発され、タイミングの技術が進歩し、(副次アクション)がうまく使われるようになり、後にムービング・ホールドが生まれてからのことだったのです。
ディズニーアニメーションの歴史はディズニーイラストの歴史でもあります。
これだけの長い間、愛され続けるディズニーキャラクターは、
イラストレーションを考える上での基本となるポイントが満載です。
徳間書店「生命を吹き込む魔法」というバイブル、
実売で1万円前後と若干高価ですが、興味をもたれましたら、
ぜひ手にとってご覧下さい。