ご紹介中の本は、イラストレーターという職業で生計を立てる筆者が、非常に勉強になった本。イラストレーションやアニメーションの勉強では基本ともいえるバイブルです。

徳間書店「生命を吹き込む魔法」

このホームページでは強く印象に残った部分を簡単にご紹介させていただいております。あらすじ未満??実際に書籍を購入されると、きっと一生モノの教科書として活躍してくれると思います。


LCラブコスメティック。筆者も利用しています。手頃でしかも楽しいサイト。ホームページはキレイで見やすい。
誰でも興味津々の内容だから、暇つぶしにもちょうど良いです。

カテゴリ「アニメーションの技法3」/31

アニメーション基本原則、番外編・「誇張について」後編

アニメーションの基本原則(9つ以外の番外編)、手法についてをお伝えしています。
ウォルトディズニーのアニメーション原則、番外編、「誇張」の後編です。

アニメーション原則誇張について 後編

イラストのテクスチャアは、イラストの線が込み入った部分と何もない部分、デザインの豊かさ、キャラクターの楽しく溌刺とした外見などで表されます。これらの要素はハッピー(ごきげん)のラフ原画と、クリンナップの両方に見て取れます(イラストは筆者のブログ参照)。

この作画は、ディズニーアニメーター:フレッド・ムーア氏と誇張についてですが、前回と同じようにディズニーアニメーション制作現場の様子をメインにご紹介。内容の元ネタは「命を吹き込む魔法」という書籍でご紹介されている、実際にあったお話です。


アニメーターのデイヴ・ハンド氏(デイブ・スぺクターではありません)は、あるカットを描いたときに話をしました。

そのカットではミッキーマウスが口笛を吹き吹きタクシーを運転していて、車内のものが揺れたり跳ねたりしています。コーナーに差し掛かった時、クルマがスリップしタイヤがパンクして車体が沈んだ瞬間、ナンバープレートが宙を飛んで天井から地面に着地、そこには「ちくしょうめ」と書いてある、というお話の筋です。


デイヴは、このギャグはいけると確信し、見逃されることのないように(見る観客の目にとまるように)演出しました。

しかし、デイヴはミッキーマウスのタクシー、クルマ全体について念入りに考えることはしなかった様。なのでそのイラストを見たウォルトディズニーは、”アクションに乏しい”と批判し、イラストの描き直しを命じました。
さらに、次に見せた書き直したイラストも、「まだ分かりにくい。これじゃ面白くないよ」と言われました。

デイヴ氏は、イラスト制作に対して試行錯誤を行います。紙に穴が開きそうになるくらいまで描いたり消したりを繰り返し、計6回も修正しました。しかしそれでもウォルトディズニーは、充分な活気が感じられないと言うばかりでした。デイヴはいい加減うんざりしてしまいました。

デイヴが最後に考えついたのはウォルトディズニーがとてもじゃないが、認めそうにないものだけでした。

それは、今までウォルトディズニーに見せると「そこまでやれと言ってない!」と怒られるぐらい極端なイラストにすることでした。そして、もう一度やり直して、おそろしく誇張したイラストを描きました。
なんだか得意な気分になって、フィルム(アニメーション)ができるのが待ち遠しかったそうです。

できたフィルムをムビオラ(フィルムを再生する機械)にセットしたところでウォルト・ディズニーがやってきました。ウォルトディズニーは、それを何度か映写し、一歩下がってデイヴの方を見ました。

デイヴは”これはクビだな”と覚悟したらこう言われました。

ウォルトディズニー「これだよ、デイヴ、こういうふうにやってほしかったんだ!」

デイヴ「あのときの経験で、ディズニー・スタジオのやり方がわかるようになった。あれ以後は、誇張で苦労したことはない。監督をしていたときは、アニメーターによくこう言ったよ。「ひとつ頼みがあるんだ。僕をカッとさせるくらい(怒らせるくらい)やってくれないか?」ってね」。


なんかいい話ですよね!それにディズニーはもちろんデイヴさんもかっこいい、渋いですね。最初から教えるのではなく自分で答えを見つけられるまでディズニーの見守る姿勢、すごくいい方法だと思います。

ディズニーアニメーションの歴史はディズニーイラストの歴史でもあります。
これだけの長い間、愛され続けるディズニーキャラクターは、
イラストレーションを考える上での基本となるポイントが満載です。
徳間書店「生命を吹き込む魔法」というバイブル、
実売で1万円前後と若干高価ですが、興味をもたれましたら、
ぜひ手にとってご覧下さい。