ご紹介中の本は、イラストレーターという職業で生計を立てる筆者が、非常に勉強になった本。イラストレーションやアニメーションの勉強では基本ともいえるバイブルです。

徳間書店「生命を吹き込む魔法」

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カテゴリ「アニメーションの技法3」/30

アニメーション基本原則、番外編・「誇張について」前編

続きまして番外編、10番目のアニメーション原則です。
アニメーションの基本原則(9つ以外の番外編)、「手法」についてをお伝えしています。

アニメーションの原則、誇張について 前編

アニメーションの原則、誇張について、ウォルトディズニーのアニメーションスタジオの風景とともにお伝えさせて頂きます。

ウォルトディズニーは、リアリズムを重視しろと命じるのはいつものこと。アニメーションの基本原則も、リアルな動きを実現するためのルール。
しかしそれでいて、ウォルトディズニーはアニメーターの作り上げたイラストに逆の希望を伝えることがあったらしい。出来あがってきたイラストに対して、誇張が足りないと言ったので アニメーター達は混乱しました。

誇張とは、ストレートに言えば「芝居、演技」のこと。
具体的に言うとキャラクターの「動き、動作」のことです。

ウォルトディズニーにとっては、両者(リアリズムと誇張)は矛盾するものではなかったのでしょう。同じ言葉でも、当人の知識レベルによって感じる意味が異なるなんていうのは、よくあることだと思います。

ウォルトディズニーは、物事の核心に迫り、そこに見えたエッセンスを発展させるべきだと考えていたのです。

ウォルトディズニーの考え方としては、悲しんでいるキャラクターは一段と悲しそうに、嬉しがっているキャラクターは一段と嬉しそうに、心配しているときは一段と心配しているように、興奮しているキャラクターは一段と興奮しているように描くのだ!といつも言っていました。

誇張とはオーバーに描くということ。”リアリティを重視すべき部分”と”誇張させる部分”、頭を使って考える事ができるかどうか?いや上司の性格を見抜けるかどうかといった方がいいのか?
いわれたこともできない人は論外、いわれたことしかできない人は進歩しない、今の社会はこんな感じですが、この頃から頭を使うことが求められたみたいですね。


ハナシは戻ります。ディズニースタジオのアニメーター達は「誇張」と聞いて、イラストを歪曲したり、不愉快なほど暴力的なアクションを描いたりすることを想像した者がいたそうです。しかしそれは見当違いでした。
(イメージを共有していなければ、誇張と聞くとそういう風に思ってしまうのではないでしょうか・・・)

ウォルトディズニーが求めていたものは、戯画化されたリアリズムだったのです。

しかし・・・あるアニメーターはそれを次のように正確に分析しました。

アニメーター「ウォルトが言っていたのは、いわゆるリアリズムとは違う。ウォルトの言うリアリズムは、説得力があるもの、人々の心に強く訴えかけるもののことなんだ。リアリズムという語を使ったのは、リアル、現実のものを求めていたからだ・・・。

(アニメーションの)キャラクターは、説得力のないことや、アニメーターの賢さをひけらかすようなことをしがちだけれど、それでは現実じゃなくて嘘になってしまう。」。


ウォルトディズニーは、信頼性を損なうものは全く受け入れなかったそうですが、大分前にご紹介したアクションの狙いさえ正しければ、表現を抑えろと要求をすることはまずなかったそうです。それを知ったとき、私は、「ピン」と来ました。 スタジオジブリの宮崎駿監督のことを・・・似ている・・・?

ディズニーアニメーションの歴史はディズニーイラストの歴史でもあります。
これだけの長い間、愛され続けるディズニーキャラクターは、
イラストレーションを考える上での基本となるポイントが満載です。
徳間書店「生命を吹き込む魔法」というバイブル、
実売で1万円前後と若干高価ですが、興味をもたれましたら、
ぜひ手にとってご覧下さい。