ご紹介中の本は、イラストレーターという職業で生計を立てる筆者が、非常に勉強になった本。イラストレーションやアニメーションの勉強では基本ともいえるバイブルです。
徳間書店「生命を吹き込む魔法」
このホームページでは強く印象に残った部分を簡単にご紹介させていただいております。あらすじ未満??実際に書籍を購入されると、きっと一生モノの教科書として活躍してくれると思います。
カテゴリ「アニメーションの技法1」/10
アニメーション基本原則2-2・「アンチシペーション」びっくりギャグ
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アニメーションの基本原則(アニメーターたちの基本原則9つ)となった手法についてをお伝えしています。
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今回はアニメーションの原則2、「アンチシペーション」その2・びっくりギャク」を記載します
前回はその2、アンチシペーション(予備動作) についてお話しました。
先の動作が想像出来ないとアニメーションが楽しめない。だから予備的なアクションを示す必要がある。それがアンチシペーション(予備動作)。
今回はそれとは逆のいきなりアクション、「びっくりギャグ」についてです。
びっくりギャグについて
「びっくりギャグ」とは!?アンチシベーションと絡めれば文章を呼ばなくてもその内容を想像出来てしまうでしょう。
びっくりギャクとは、観客があることを予想しているときに、突然何の前触れも無く、予想とは違うことがおきること。これがびっくりギャク。しっかりした構想と煮詰まったアイデアを具現化することで、初めて成立します。
びっくりギャグは、観客が実際の結果とは違うことを予想していなければ成立しないのです。
同様に舞台での動作も、観客の側に予想が無ければ、無意味なおどかしが続くだけで終わってしまいます。観客の皆様がアニメーションと物語はどういう風に進んでいくか、これをしっかり想像できることで初めて、効果的な”びっくり”が価値を持ちます。
しかし初期のアニメーションの動きは非常に唐突、つまり前提部分からして煮詰められていなかったので、観客はきちんと予想がつけられず、せっかくのギャグを見逃してしまうことが多かったのです。
う〜ん、全てを構成する作り手と、順を追ってダラッと見る観客、一つのアクションを見て想像することも変わってきてしまうのは容易に想像出来ます。アンチシベーションの重要性はわかっちゃいるけど、といったところなんでしょう。
ではディズニーはどうしたか?
ウォルトディズニーはまず、次のような問題から解決していきました。
ウォルトディズニーは自分の考えた解決策を「狙い」(エイミング)と呼びます。
今回の狙いとは??あるアクションあるいは仕草が、観客全員の目に留まるようにするにはどうすればよいか。これが課題です。
そこでウォルトディズニーは実演して見せました。
アニメーション「幸せのウサギのオズワルド」(今で言えばミッキーマウスのもとになっているキャラクター)では、キャラクター”オズワルド”がポケットに手を入れてお昼のサンドイッチを取り出そうとする場面があります。
その場面では、全身の動きが手とポケットに関係していなけれればなりません。ポケットを狙う手は、誰の目にも明らかな位置に置き、それを見ただけで、次に起きる事が予想できるようにします。頭部もそっぽを向いていてはいけません。
ココで重要なのは、オズワルドがポケットに手を入れるというアクションなのです。その動作は、ギャグではないので笑わせる必要はありませんが、必ず観客の目に入るようにしなければなりません。
「あのサンドイッチはどこから出てきたんだ?」と観客にいわれては、ダメなのです!言葉で表せば簡単ですが、ここに気付くことこそが一流のアニメーター。ウォルトディズニーはそのアクションを誇張して演じ、アニメーターのイラスト(絵)が及びもつかないものにして見せました。のちにレス・クラーク氏はこう言っています。
「今なら単純な動きに見えるだろうが、当時は違った。誰もそんな動きは試したことも確かめたこともなかったんだ。」
レス・クラーク氏は、当時ウォルト・ディズニーのアニメション制作スタジオの長年、トップクラスのアニメーター(後日詳しくお話します。)
現実の世界では、動きにはたいてい、何らかのアンチシペーション(予備動作)を伴います。もちろん誰も意識はしてないでしょう。生物の動きには、アンチシペーションがあるのが自然で、それ無しではどんなアクションもほとんど力を失ってしまいます。
ゴルファーのバックスイングはアンチシペーション、野球のピッチャーのワインドアップもそうです。バッターがボールを打つときも一連のアンチシペーションがありますが、打撃の力を示すのは、体をひねって前に踏み出す最後の動き。ボールがホームベースに迫ってきたとき、最も重要なのはそこです。それがないとどんな猛スイングもただのバントになってしまうのです。
レイ・クラーク氏が言ったとおり、今で言えばごく当たり前のことになってしまいますが、誰も考えない・・・考えても、試さない。ウォルトディズニーのお客様の気持ちになって常に考えていく姿勢は、どんな仕事であっても見習わなければいけない当然の姿勢。筆者オカサンタ自分に反省でございます。
ディズニーアニメーションの歴史はディズニーイラストの歴史でもあります。
これだけの長い間、愛され続けるディズニーキャラクターは、
イラストレーションを考える上での基本となるポイントが満載です。
徳間書店「生命を吹き込む魔法」というバイブル、
実売で1万円前後と若干高価ですが、興味をもたれましたら、
ぜひ手にとってご覧下さい。