アニメーションの技法
アニメーションの原則12アピール(訴える力)後編
ディズニーアニメーションの原則、手法の最後の一つカテゴリー12アピール(訴える力)
ポイントはクローズアップ?
最後の説明になりました。 前回、イラストを描く上で、線というものについてお話しました。今回、最後ですがその続きだと思ってください。
単なる線で感情を伝えようとするのは、それだけで無茶なことだと思えますね。キャラクターが、どんな反応をしているのか、観客にちゃんと見てもらおうとすると、ついクローズ・アップ(キャラクターを画面いっぱいに出すこと)に頼りたくなります。
でもクローズ・アップには、非常に難しい問題があります。
ディズニースタジオのアニメーター:デイヴ・ハンドは、1938年に極端なクローズ・アップの是非について尋ねられたとき、こう答えています。『キャラクターの顔をアップにしすぎると、平板に見えてくる。新しい彩色方法でそこを何とかしたいと思っているが、その方法が完璧なものになるまでには、時間がかかるだろう。』(結局、完璧なものにはなりませんでした)
一番分かりやすいディズニーアニメーションで説明すると、当時、アニメの劇場用に制作されたアニメーター:ジャック・キャンベル作『ピノキオ』の一場面です。極端なクローズ・アップが平板に見えるのは、描けるものがほとんどないからです。同じ色が広い範囲に平塗りされていることも問題になります。
アニメーション『ピノキオ』に出てくるブルー・フェアリー(星の女神)のクローズ・アップです。平板に見えてしまうクローズ・アップは実在感を出すために、ディズニースタジオのインク・アンド・ペイン部が丹念に補足を行いました。いろいろな素晴らしいエフェクトを使うことも可能ですが、普通のアニメーションの制作予算ではまかないきれないことが多いです。アニメーションというメディアでは、もっと効果的で、狙いをもっと強く伝える(アピールの強化)要素を、見つけ出すための戦いが耐えず続いています。アニメーションの絵は線で描かれ、セルにトレースされ、平塗りされ、背景に重ねて撮影され、巨大なスクリーンに映し出されます。最後の段階では、絵の中の繊細な線は拡大され、30センチも幅がある真っ黒な線になってしまいます。
1930年代の半ば頃、ディズニースタッフは、微妙な陰影や、質感や、輪郭のない部分がほしいと思っていましたが、そういう要素は現実的ではなかったのです。ディズニースタッフは、各カットのポイントをうまく伝える方法を模索し、そうする中で、キャラクター・アニメーションを発展させ、世界をあっと言わせる芸術に変えていったのです。
しかし、当時ではディズニースタジオのスタッフたちは、そういう努力を自慢に思うでもなく、ただ限界を感じて苛立つばかりだったのです。ディズニースタッフがスタジオの廊下で同僚とすれ違ったりするときなど、お互いに首を振りながら『アニメーションは実に原始的なメディアだな』と言い合ったそうです。
これは、技術や制作するためのノウハウを自分達がゼロから考え作り出さなければならないということなどからそう言っていたのでしょう。チョット昔と今現在のインターネット社会に生きる人たちと同じ感じがしますが、それ以上だったのでしょうね。
- アニメアクションその1
- アニメアクションその2
- アニメーションの原則1
- アニメーションの原則2
- アニメーションの原則3
- アニメーションの原則4
- 被写体はスポーツ選手
- 新人の創意工夫の才
- 演劇での最も古い工夫
- オズワルドびっくりギャグ
- 演劇最古のステージング
- ステージングとマジック
- アクションのルール
- ミッキーマウスの苦労
- アニメーションのやり方
- ラフスケッチは設計図
- 先走りの中割の絵(動画)
- アクションのタイミング
- ウォルトのアイデア
- アクションのドラッグ
- キャラクターのオチ
- キャラクターのポーズ
- ムービング・ホールド
- 誠実な作品を作るには?
- キャラの運動曲線
- 副次アクションで強調
- 観客に見せたい部分
- 中割りのタイミング前編
- 中割りのタイミング中編
- 中割りのタイミング後編
- 誇張とリアリズム前編
- 誇張とリアリズム後編
- 新人アニメーターミッキー
- 新人へのアドバイス
- 新人アニメーターの苦労
- アニメ原則アピール前編
- クローズ・アップの問題
